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author niciro [write]


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ナ ル カ ミ の 商 人


ナルカミの商人と呼ばれる褐色の少年と、その土地土地に住む人々とのおはなし。
不定期連載です。



ー 目 次 ー

アンバーフィールドのちいさな絵描き(1)
アンバーフィールドのちいさな絵描き(2)
アンバーフィールドのちいさな絵描き(3) ー 完 ー

くれないの吐息(1)

2011.11.17(Thu)



ナ ル カ ミ の 商 人


ー くれないの吐息 (1) ー


ここに花は咲かない。
ここに水は流れない。
ここに人は訪れない。

ひとり。


ざらりとした感触の煤けた白い紙。母から貰った鋏が軽快な音を立て走る。
私はこの音が好き。瞬間、ちらちらと鋏を操る自分の手先が視界に入る。
私はこの手が嫌い。色が白すぎる。血管が透け、白というより、もはや青い。
このきしきしなる髪も嫌い。嫌い。全部が嫌い。

「お母様」

呟いた拍子に首周りの髪の毛が凍る。ため息が出る。今度は手元の紙に霜が立つ。
涙が出る。いつも通りそのままポトポトと涙を流し、しばらくするとまた鋏を動かす。
切り紙だけが増えて行く。既に様々な形と色のモチーフが部屋一面を埋め尽くしている。
バラ、ネコ、鳥、バレリーナ、魚、サンタクロース、雪の結晶。
切り紙をやってる時だけは少しだけ夢中になれる、忘れられるのだ。
今日も日が沈む。


コツ、コツ、

コツ、コツ


一瞬気のせいかと思ったが、紙を切る音に混じって確かに聞こえた。
ドアを叩く音だ。でもまさか。
ここは街から歩けば3日はかかる暗い森の真ん中の真ん中で、外からの光はなく、おまけに凍てつくほど寒い。
何より私のような魔女の住む場所だ。


コツ、コツ、


やはり気のせいではない。恐る恐るドアに近づく。
何回か躊躇したが少しだけ、ドアを引いてみた。隙間から覗く。
少年が立っている。毛皮の耳当て付き帽子と分厚いコートを羽織っている。
口元までマフラーで隠しているが、少しだけ見える目元の肌は褐色だ。
身体に不似合いなほど大きな荷物を背負っている。

「商人です。」

商人。

「異国の商品を見ませんか。」

異国。

商人はじっと私の目を見つめる。
その黒い瞳を見ていると、母の葬儀の日を思い出した。


こくり、頷くと商人は一礼をして、部屋に入った。
商人は足下のモチーフを踏まないように靴を脱いでいる。

私以外の重みを数年ぶりに受け止めた床がぎしりと軋む。



つづく

2011.11.17(Thu)



ナ ル カ ミ の 商 人


ー アンバーフィールドのちいさな絵描き (3) ー


僕たちは魔法の硝子瓶を商人から買い取った。
決して、安価な物ではなかったがアリアは大層喜び、その場でお気に入りの絵の具箱を広げた。
傾き始めた太陽を見て今夜はうちで休むように勧めたが
お茶を飲むと商人はすぐに次の街へ向かうと席を立った。
アリアは先ほどの硝子瓶を試したいらしく、
商人を見送るついでにスケッチブックと硝子瓶、絵筆を持って家を出た。

アリアのスケッチブックの中の糸蜻蛉が琥珀色に染まる。
アンバーフィールドの秋の小麦の色。
先程商人が見せた手順通りにアリアが抽出した色だ。
すっとした胴体に大きな瞳と、透けた羽が上手に描かれている。

「上手。」

アリアのスケッチブックを静かに覗き込んでいた商人がもらす。
少し照れた様にアリアが口の中で笑う。
糸蜻蛉はみるみるキャンパスを埋め、
完成した絵の透き通る琥珀色は幼いアリアの絵を何倍も高貴なものに見せた。

「その絵、譲ってもらえないだろうか。」

「え?」

アリアが突然の言葉にぽかんと商人を見上げる。
商人は巨大な鞄を肩から降ろし、何やらごそごそと中身を探る。
なかなか目当てのものが見つからないのか何か呟いている。
何を言っているかは聞き取れないが何回も同じ口の形になる。多分、商品を呼んでいるのだ。
何回か繰り返した後、ゆっくり立ち上がった商人の手にはあの美しい銀色の獣の毛皮があった。
あ。思わずシゼルが漏らし、すぐに口元を押さえる。

「これと交換して頂けないでしょうか。」

「でも...」

困惑した表情でアリアが僕を見る。
あの毛皮は高価だ。上手とはいえアリアの絵は所詮幼い少女のらくがきである。

「商人さん、そんな逸品と....対等な価値のある絵ですかな」

「あります。」

商人は即答した。声色は真面目だった。
僕もシゼルと顔を見合わす。

「お譲りして頂きたい。僕の商品にしたい。美しい絵です。」

「でも...」

「譲って下さい。」

商人はかがみ込むとアリアの目をじっと覗き込む。
きょどきょどと目を泳がせていたアリアの頬がみるみる赤く染まる。
たまらず頷いた。

「アリア!」

「お母さん、お願いします。 おじいさんも。」

同じように商人は僕達の目を覗き込む。
夕日の色が混じった瞳は橙と黒のコントラストが強い、引き込まれる。
あまりの真剣さに気圧され、しばらく断り続けたが最後には僕達も頷いてしまった。
商人の唇はほんの数センチほど口元の筋肉を引き上げ、笑みのような形を作った。

「ありがとう。」

アリアの絵を丸めて金色の糸で縛ると、深緑色の光沢のある筒の中にそっと入れた。
それをしまうと、軽々と再び鞄を背負った。また瓶のあたる音がする。


「あ、商人さん」


「....はい。」


「以前、この村に....いやあなたではないでしょうね...
 あなたに似た褐色の、黒髪の、大きな荷物を背負った少年を、僕は幼い頃見たことがあるのだが...」


「....はい。僕ではありません。」



「おそらく父です。」



「父も僕と同じでしたから。」



「同じ」




「ナルカミの商人、でしたから。」




琥珀色の草原が一斉にざわめく。
深く一礼すると、商人は元来た道と反対の道に足を踏み出していった。
ナルカミの商人。僕は心の中でもう一度商人の言葉を繰り返してみた。




ー END ー




あとがき

「ナルカミの商人」は無口で表情の薄い褐色の少し変わった商人と、その土地土地に住む様々な人達のお話です。
私は今までほとんど小説と呼べるものを書いた事がないので、恥ずかしながらこんな幼稚な文しか書けません。
が、いい歳だし文字で自分の世界観を伝えれるようになれればという思いがあってぽつぽつ地道に深夜キーボードを打っています。文は難しいです。読み返すと赤面します。これからも何回も読み返して何回も描き直していくと思います。ナルカミの商人シリーズはまだ続きます。思い出したかのようなタイミングでのろのろ更新していきたいと思います。こんなあとがきまで読んでくださってありがとうございました。

2011.11.17(Thu)



インタビュズのきよ


ageha.jpg
きよは物欲を抑えられないタイプなので、かわいいものを見るとついつい買っちゃうんですな。
そんなんで借金返せるんかね...。

あとちょびっとえろいのでR18ですが真P漫画も投稿しました。
久々にがんしゃ描くのたのしかったです。下品ですいません。おちはないです。
Pと真がいちゃいちゃする漫画

2011.09.25(Sun)



ナ ル カ ミ の 商 人 (2)


ー アンバーフィールドのちいさな絵描き(2) ー


「あら」

水仕事をしていたシゼルが振り返って少し目を見開く。
シゼルもこの土地に小さい頃から住んでいるせいか、あまりよそ者を見る機会がない。
ましてや、このような姿の商人は生まれて初めて見たのだろう。

「商人さんだよ おかあさん」

アリアがはそう答えると、家路に着くまでの間ずっと握っていた商人の手を自慢げに持ち上げる。

「まあまあ、異国の商人さん...」

ちらりと僕を見たが、シゼルも興味津々の様子でさっきから商人を頭から靴の先まで感心したように眺めている。
背中の大きな鞄がやはり気になるようだ。

「ああ、少し商品を見せてもらおうと思ってね」

「親戚以外にお客が来るなんて久しぶりね、お茶を煎れるわ」

シゼルは突然の来客にうきうきした様子で台所に戻ると、湯を湧かし始めた。
アリアも食卓のいつもの席に座ると、商人の様子を足をぶらつかせながら眺めた。

「おじいさんも、座って下さい。」

僕も自分の席に腰掛けた。
商人はその巨大な鞄を肩から降ろすと床に置いた。また瓶のぶつかり合う音が小さく鳴る。
しゃがみこみ、何やら商品を吟味しているようだ。
アリアは目を輝かせながら、机の下を覗いている。

「えっ、え、....わぁーっ」

アリアが感嘆の声をあげる。
ゆっくりと立ち上がった商人の手には、鼻先の長い銀色の動物の顔。ずるずると商人がその胴体を鞄から引きづり出していく。最初の方に、この胴体を支えるにはどう考えても小さすぎる足が四つ付いていた。しかし、一向にその胴体の終わりが見えない。結局それは四人掛けのこの食卓、三分の一のスペースを占領したところでようやく尻尾を見せた。その長すぎる胴体とは反対に尻尾はあっけないほどに短い。

「ギレルアセリサイトブロアの毛皮。」

「きれいっ ふわふわ」

アリアがうっとりとその毛皮を撫でる。商人が頷いたので、私もそれを撫でてみた。
質のいい綿毛のような触感が優しく右手に絡み付いてくる。本当に心地良い。
商人がその短かめの尻尾を無遠慮に掴む。

「尻尾をこう持って、二回ほど縦に振る。」

腕を大きく上下に二回降ると、一気に空気が抜けるような音がしてそれは丸められた銀色の美しい絨毯になった。
茶菓子を持ってきたシゼルがぽかんと口を開けている。

次に商人が横に尻尾を三回ほどを振ると、それは銀色の高価そうなコートに。弧を描くとマフラーほど短く。下から一回ふわりと持ち上げると可愛らしい耳当て付きの帽子に姿を変えた。

「普段はこう。」

尻尾を二、三回くすぐるとみるみるそれは縮こまり、最終的に鼻先がちょこんとだけ飛び出した毛糸玉ほどの大きさになった。
ここら一帯は冬には、猛烈な寒波が襲う。これがあれば、冬の買い出しも幾分か楽になるだろう。シゼルは相当心をくすぐられたようだ。

商人は毛皮を横に置くと、その後も次々と商品をその大きな鞄から取り出した。
瓶詰めにされた七色の液体生物、象牙彫刻の施された懐中時計、他にもたくさん。
アリアが商人の行動を身を乗り出して見つめている。

最後に、商人は少し背の高い砂時計の様な形の硝子瓶を取り出した。真ん中は洋梨のような形で、中で砂粒ほどの星のような粒子が硝子にキンキンと音を立てながら渦巻いている。その上に半球体のカップのような形になっており、夜のような群青色の切子模様が美しく、蓋は銀色だ。そこにも小さな蝶の彫り模様が施されている。洋梨の下の部分はどっしりとした台形型。気泡が入った硝子の中には何やら澄んだ液体が入っている。

「これ、ひとつ頂きます。」

商人は先ほどシゼルが持って来た茶菓子の正方形のグレープジェリーを包みから出すと、その硝子瓶の銀色の蓋を開け、ぽとんと中に落とした。

「あ」

アリアがひとつ呟く間に、ジェリーの薄紫色がどんどんと下の洋梨型の部分に溶け出していった。例えるなら、清潔な水に絵の具を溶かした時のような光景だ。マーブル模様になった薄紫は洋梨部分で、くるくると回転していた粒子にぷつんぷつんと寸断されていく。先ほどまで色という色を持たなかった粒子達はどんどんグレープジェリーの色に色づいていき、最終的に一番下の台形型の部分に落ちて行く。台形型の部分の澄んだ液体はそれらをやさしく受け止め、少し経つとそこはすっかり綺麗な薄紫色に染まった。
茶菓子だった時にはあまり気づかなかったが、こうやって見るとそれはとても美しい色だ。

「西の外れの森で絵ばかり描いている背の低い魔女が作った硝子瓶です。どんな物の色も抽出し、絵の具に出来る。」

「すてき」

ぽつりとアリアが呟く。シゼルがアリアの頭を撫で、優しくに微笑んだ。

「おとうさん、これを頂きましょう」

僕も賛成だった。



つづく

2011.09.21(Wed)





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